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地図を見ながら探索してみた。
どうやら、街は1つしかなく、一箇所の道は立入禁止になっていた。
にしたってでかい街なので探索も楽しかった。
色んな車が働き、生き生きしている。
私の前の世界は人間が頑張って働いていたけど。
……人間? なんだろう。
ちょっと突っかかったけど、走っていく。
歩くというのの代わりに走るって感じなのは、車だからだろう。
ちなみに、街の方はレースが始まるまではレース場は開放されている。
その間に走ろうと思ったので申請しておいた。
刹那、急にブレーキが壊れたのかわからないけど、車が突っ込んできて、気がついたら病院にいた。
どうやら同じ世界だったようで、車なのはわかった……けど、違和感覚える。
どうやらコアなどは無事だったようだけど、車体がいかれたとのことで、載せ替えたなどときいて、どんなのだろうと期待した。
で、鏡を見てみたら更に驚いた。
――― こここ、これは、噂に名高いスープラ……!? しかも、GRスープラだ!!!???
混乱した私に、一応は意図的だったらしい犯人が捕まったと聞いてホッとした。
にしてもびっくりしたなぁ……。
それからかなり経過して。
退院してからの日々を過ごしている間にレースをしていくことになった。
初戦は80スープラ先輩たちを相手に、レースすることになった。
落ち着いて、気を、流れを見る。
それを考えて走っていたら、あっさりゴールできた。
何か、事故前より早い気がする。
「おい」
「あ、あの……ご、ごめんなさ……」
「謝るんじゃない、自信を持て。1位に輝けた新人だしな」
「あっはい。で、でも80スープラさんは悔しくないんですか?」
「悔しいさ。特注エンジンでもあっさり追い抜かれたしな。お前をライバル視しているから、覚悟しとけよ?」
「私も負けませんからね」
「その意義だ。それにさ、昔の友人を思い出したんだ。こういうヤツだったけどな。最後、あの立入禁止のところで行方不明のままなんだ」
「えっ……」
「姿が目撃されたのは、“沈む前の公園”だったと聞いている」
「え? し、沈む前……?」
聞けば、立入禁止のところは沈んでしまったところだという。
ここは助かったものの、隣町が沈み、車たちはそのまま亡くなった、と聞いている。
「けど、優勝者になったんだ、一応聞いてみたらどうだ?」
「で、でも」
と、一台の別の車が来た。
「……行け。立入禁止の場所へ」
「でも、許可が」
「取ってある。俺経由だ。大統領名義だ」
「だ、大統領……? それに、そのボディは……」
「いいんだ。気にするな。行け」
「はい! ごめんなさい、行ってきます!」
スープラくんは「気をつけろ、何があるかわからんからな」と言った。
その後立ち入り禁止区域へと踏み込めたので、踏み込んだ。
確かに水がなみなみと浸された、沈んだ街が見えた。
「……車たちは、どんな思いだったんでしょうね」
それでも、飛び込んでみた。
「溺れ……ない……? それに、息苦しくない……? むしろ、ボディたちが……錆びたりしない……?」
とにかく進んでいくことにしたが、街はすでに苔などで生えていた。
悲しくなった。
と、泡のようなのを見たのでそこへ向かうことに。
そしてたどり着いたのは、一台の黒いバスだ。
「ん? 君は?」
「私はGRスープラです。あなたは……?」
「ブラックバスと名乗ってるさね」
「魚?」
「違う、黒いバスだよ。で、君はあの友人を探したいと思ったんだね?」
「そうだけど」
「その友人は君が巻き込まれたように、事故死した。その後水が溢れ出し、まるで悲しんでいるように街を沈めていったんだ。それで車たちは死んでいった」
「そうでしたか……」
「僕が生きているのは、燃料切れしていても走れるからなんだ。不思議な水で浸されてるから、一生出れないんだけど」
「どうして?」
「燃料切れした車は動けなくなる、それは君もご存知の通りだ。ただ特例で、湖の中にいても走れるヤツがいる。それが僕さ。また、魔法のエンジンもその特例の一つだ」
「なるほど……」
「一歩でも外に出れば僕は死ぬだろう、そんな状態だ。だから、外に出ることは叶わないんだ。一生ね……」
「その友人の亡骸は……無理ですよね」
「実はエンジンだけは取っておいてあるんだ。ちょっと錆びてるけど」
そのエンジンを受け取ると、私は「ありがとうございます」と言っておいた。
「ボディとかはもう大破して無理だったけど、エンジンだけは救ってあったんだ。だから……彼を弔ってあげておいてくれ」
「わかりました!」
その後出ようと思った時、そのバスはじっと見ていた。
「君は、きっと将来的に輝く未来があるよ」
「ありがとうございました! 会える時はもうないと思いますが……!」
「元気でね」
その後山を登って水面から出てから、あのスープラにあった。
まだ会場をうろついていたようだ。
「……! それは……!」
「不思議なバスとあったし、その時の話を聞けました」
その話を全てした時、スープラさんはじっと見ていた。
「そうか……。その水に浸されても生きているバスか……。そういうやつは特例でな、そいつらは水から出たら心臓が止まるのが早まるんだ……」
「だから、あの時叶わないようなことを……」
「そいつは外に出たがらないだろうな。現状、出てもいじめられかねないし、死にかねない。そんな状況で出ようと思うか?」
「思わないです。……それで、友人さんのことも」
「それは、君の話で知ったんだが、エンジンだけなんだな?」
「はい、本当に……」
「そんな顔するな。あいつは笑わないし、悲しむだけだ。お前さん、なくより笑ったほうがいい。それが、あいつに対しての、いや、あいつ含めた車たちに対する弔いだ」
「そうですね」
ということでエンジンをスープラさんに渡すと、大切そうにしまった。
「GRスープラ」
「なんですか、スープラさん」
「俺は、レースで勝ちたい思いはある、お前はどうだ?」
「勝ちたいです」
「なら、俺は君をライバルとしたいんだが、君は嫌か?」
「いいえ、むしろライバルがほしいです」
「よし! じゃあ頼むぜ!」
「望むところです!」
「まず濡れたからだなんとかしようか」
「あっ」
ということで手伝ってもらって乾かしてもらいました。
「面白いやつだ」
「ご、ごめんなさい~……。あ、もう夕方なので帰らなきゃ!」
「おう! またな!」
その後彼は去っていった。
ああいう車、かっこいいけど、友人を失った気持ちはわからなくはない。
私も、生前友人とか失っていたから。